故人様の安置場所は自宅と安置施設のどちらがよい?選び方と確認点

故人様の安置場所には、すべてのご家族に共通する正解があるわけではありません。
「一度は自宅へ帰してあげたい」というお気持ちを大切にすることも、安置施設を利用してご家族の負担を減らすことも、どちらも故人様を大切に考えた選択です。
自宅と安置施設のどちらを選ぶかは、部屋の広さや費用だけでなく、故人様やご家族の希望、面会のしやすさ、親族や弔問客への対応、ご家族が休息を取れるかなどを含めて考えることが大切です。
この記事では、家族葬のウィルの佐藤が、1級葬祭ディレクターとしての現場経験と、自身の祖父を自宅安置した経験をもとに、自宅安置と安置施設の選び方を解説します。
このページを読むとわかること
- 自宅安置と安置施設の違い
- それぞれが向いているご家族
- 自宅安置で確認する部屋・搬入経路・室温
- 見落としやすい来客対応やご家族の負担
- 一度自宅へ安置した後に施設へ移す考え方
1.安置場所に共通する正解はありません
故人様を病院や介護施設などから搬送するときは、まず、葬儀までどこでお休みいただくかを決めます。
主な選択肢は、次のとおりです。
- ご自宅
- 葬儀社の安置施設
- 民間の安置施設
自宅へ安置するか、安置施設を利用するかは、葬儀の形式とは別の問題です。自宅へ安置しても、自宅で葬儀を行う必要はありません。また、安置施設を利用しても、家族葬や一日葬など、ご家族が希望する形で葬儀を行えます。
2.自宅安置と安置施設の違い
自宅安置は、故人様のそばで時間を気にせず過ごしやすいことが大きな利点です。一方、安置施設は、自宅の準備や室温管理、来客対応などをご家族だけで抱えずに済むことが利点です。
| 確認すること | 自宅安置 | 安置施設 |
|---|---|---|
| 故人様と過ごす時間 | 時間を気にせず過ごしやすい | 面会時間や予約方法は施設による |
| 付き添い | 比較的自由に付き添える | 付き添い・宿泊の可否は施設による |
| 室温・保冷管理 | 葬儀社の案内を受けながら自宅で管理 | 施設側で管理される |
| 搬入 | 玄関・廊下・階段などの確認が必要 | 自宅への搬入は不要 |
| 来客への対応 | ご家族が対応することが多い | 施設の面会方法に合わせて調整する |
| ご家族の負担 | 部屋の準備や来客対応が必要になることがある | 自宅の準備や来客対応を抑えやすい |
| 費用 | 搬送、ドライアイスなどを確認 | 安置料、面会条件、追加搬送などを確認 |
どちらが優れているということではありません。ご家族が何を大切にしたいかによって、適した選択は変わります。
3.自宅安置が向いているご家族
自宅安置は、故人様を住み慣れた場所へ帰してあげたい場合や、ご家族だけでゆっくり過ごしたい場合に向いています。
- 最後に一度、自宅へ帰してあげたい
- 故人様が生前、自宅へ帰りたいと話していた
- 家族だけでゆっくり過ごしたい
- 面会時間を気にせず、そばにいたい
- お子様やペットも一緒にお別れしたい
- 親しい方に自宅でお参りしてもらいたい
- 住み慣れた部屋や、いつもの環境で休んでもらいたい
「入院期間が長かったので、最後は家へ帰してあげたい」と希望されるご家族も少なくありません。自宅に戻ることが、ご家族にとって少しずつお別れを受け止める時間になることもあります。
ただし、自宅へ帰すことだけを優先するのではなく、その後、葬儀までご家族が無理なく過ごせるかも考える必要があります。
4.安置施設が向いているご家族
安置施設は、自宅の環境や来客対応に不安がある場合、ご家族の休息を確保したい場合に向いています。
- 自宅に安置できる部屋がない
- エアコンなどで室温を管理することが難しい
- 玄関、廊下、階段などの搬入経路に不安がある
- 集合住宅で周囲への配慮が必要
- 親族や弔問客への対応を自宅で行うことが難しい
- ご家族が遠方に住んでおり、すぐに集まれない
- 葬儀までの日数が長くなりそう
- ご家族の休息を確保したい
安置施設を利用することに対して、「自宅へ帰してあげられず申し訳ない」「そばにいてあげられないのではないか」と感じる方もいらっしゃいます。
しかし、安置施設を利用することは、故人様を大切にしていないという意味ではありません。ご家族が休息を取り、葬儀の準備をしながら、落ち着いて故人様と向き合うための選択になることもあります。
面会については、施設によって時間、予約方法、人数などが異なります。安置施設を利用する場合は、費用だけでなく、どのように故人様と会えるのかまで確認しましょう。
5.自宅安置で確認すること
自宅安置には、広い和室や特別な部屋が必ず必要というわけではありません。エアコンで室温を管理でき、布団一組を敷き、周囲で必要な処置を行える程度の空間があれば、普段使っている寝室や洋室でも安置できる場合があります。
ただし、実際に自宅安置ができるかどうかは、部屋の広さだけでは決まりません。
搬入経路
- 玄関の幅
- 廊下の幅や曲がり角
- 階段
- エレベーター
- 部屋までの経路
- 家具を移動できるか
集合住宅では、エレベーターにストレッチャーが入るか、別の搬入方法が必要かなども確認します。
室温管理
故人様のお身体の状態を保つため、季節を問わず室温管理が必要です。特に夏場や日当たりのよい部屋では、エアコンを使用し、葬儀社の案内に従って室温を保ちます。
ドライアイスの交換や故人様の状態確認についても、葬儀社から説明を受けましょう。
ご家族の生活環境
安置するお部屋だけでなく、ご家族が食事や睡眠を取れるかも確認します。故人様のそばで過ごしたいというお気持ちがあっても、常に来客への対応が必要になる状態では、葬儀当日までに疲れ切ってしまうことがあります。
6.見落としやすい来客・親族対応
自宅安置を考えるときに見落とされやすいのが、親族や弔問客への対応です。
自宅へ故人様をお連れすると、親族、友人、近所の方などが、お参りに訪れることがあります。故人様と親しかった方に会っていただけることは、自宅安置の大きな利点です。
その一方で、ご家族には次のような対応が生じる場合があります。
- 部屋や玄関の片付け
- 弔問に訪れる方への連絡
- 来客の応対
- お茶や食事の準備
- 駐車場所の案内
- 親族からの意見や要望への対応
- 近隣の方への配慮
葬儀までの日数が長い場合、こうした対応が毎日続く可能性もあります。また、地域の風習や親族ごとの考え方が違うと、仏壇や神棚の扱い、葬儀社の選び方など、故人様のお見送りとは別の対応に時間を取られることがあります。
- 誰が弔問に訪れる可能性があるか
- 来客への対応を誰が行うか
- 葬儀の進め方に強い意見を持つ親族がいるか
- ご家族が休める時間を確保できるか
7.自宅から安置施設へ移した実際の経験
佐藤自身も、祖父を病院から一度自宅へ連れて帰った経験があります。
祖父は入院中から「家に帰りたい」と話していたため、ご家族はその希望をかなえたいと考え、自宅安置を選びました。
ところが、祖父は兄弟が多く、自宅の近くにも親族が住んでいました。自宅へ帰った後は、朝、昼、夜と親族が訪れ、葬儀社の選び方、地域の風習、仏壇や神棚の扱いなどについて、さまざまな意見が出るようになりました。
ご家族は仕事を休み、来客や親族への対応を続けましたが、葬儀まで約1週間あったこともあり、次第に心身ともに疲れてしまいました。
このままでは、葬儀当日までに疲れ切り、祖父とのお別れに気持ちを向けられないと考え、途中から安置施設へ移すことにしました。
安置施設へ移った後、ご家族はようやく落ち着いた時間を持つことができました。そして、「親族への対応をどうするか」ではなく、「祖父のために何をしてあげたいか」を話し合えるようになりました。
昔の写真や思い出の品を集め、家族や孫たちでメモリアルコーナーを作る時間も持てました。
8.一度決めた安置場所から移すこともできます
最初に自宅安置を選んだからといって、葬儀当日まで必ず自宅で過ごさなければならないわけではありません。
葬儀社の対応状況によっては、次のような方法を相談できる場合があります。
- 最初の数日だけ自宅で過ごす
- ご家族や親しい方がお参りした後に安置施設へ移す
- 安置施設から自宅へ移す
一度自宅へ帰してあげたい気持ちがある一方で、「葬儀まで長くなったときに対応できるか心配」「親族の訪問が続くと負担になりそう」という場合は、最初から葬儀社へ伝えておきましょう。
途中で移動する場合は、次の点を確認します。
- 移動に対応できるか
- 追加の搬送費用
- 移動できる時間
- 安置施設の空き状況
- 移動後の面会方法
- 故人様のお身体の状態
安置場所を途中で変えることは、最初の選択が失敗だったということではありません。ご家族の状況や葬儀の日程に合わせて、より無理のない環境へ調整することも一つの選択です。
9.安置の日数と費用を確認する
安置にかかる費用やプランに含まれる日数は、葬儀社や施設によって異なります。「安置費用がかかるか」だけでなく、日数が延びた場合の金額まで確認しましょう。
- プランに何日分の安置料が含まれているか
- 含まれる日数を超えた場合、1日いくらかかるか
- ドライアイスは何日分含まれているか
- 追加のドライアイスはいくらか
- 面会に料金がかかるか
- 自宅と施設の間を移動する場合、搬送費用がかかるか
- 葬儀までの日数が延びた場合の総額
火葬場の空き状況、宗教者や親族の都合によっては、亡くなってから葬儀まで数日以上かかることがあります。最初の1日分だけでなく、葬儀までの日数を想定した費用を確認することが大切です。
安置施設を利用する場合は、料金とあわせて、面会時間、予約の有無、付き添いや宿泊の可否、お花やお供え物を持ち込めるかも確認しましょう。
安置費用を含む葬儀プランを比較する際は、 葬儀社の選び方の記事 も参考にしてください。
10.迷ったときに考えたい5つのこと
自宅と安置施設のどちらにするか迷った場合は、次の5つを順番に考えてみてください。
-
故人様やご家族に希望があるか
「家へ帰りたい」「家族だけで過ごしたい」など、故人様が話していたことがあれば、大切な判断材料になります。 -
自宅で無理なく過ごせるか
部屋の広さ、搬入経路、室温だけでなく、ご家族が食事や睡眠を取れるかも考えます。 -
誰が訪れる可能性があるか
親族、友人、近所の方など、弔問に訪れる方の人数や関係性を考えます。 -
葬儀まで何日かかるか
数日間であれば対応できても、日数が長くなるとご家族の負担が大きくなる場合があります。 -
故人様との時間をどのように過ごしたいか
自宅で長くそばにいることだけでなく、安置施設を利用しながら面会し、写真や思い出の品を準備することも大切なお別れの時間になります。
まとめ|葬儀までご家族が無理なく過ごせる場所を選びましょう
自宅安置と安置施設のどちらがよいかは、ご家族によって異なります。
自宅安置には、住み慣れた場所で、時間を気にせず故人様のそばにいられる良さがあります。
安置施設には、室温管理や自宅の準備、来客対応などの負担を減らし、ご家族が休息を取りながら葬儀へ向き合える良さがあります。
大切なのは、どちらを選ぶかということだけではなく、故人様とご家族が、葬儀までの時間を落ち着いて過ごせる環境を整えることです。

